ここから本文です

教員のリアルを知る

大人になった教え子と語ろう

教員にとって、教え子たちとの出会いは人生の宝物です。かつて日野市立日野第八小学校に勤務していた下里先生が、平成25・26年度に担任を務めた、当時5・6年生だった教え子たちと10年の時を経て再会。懐かしい思い出話に、泣き笑いの花を咲かせました。

MEMBER

下里 鮎乃先生平成16年度採用

日野市立日野第八小学校
(平成21年~27年勤務)
現在は東京都教育庁
人事部管理主事

教え子の皆さん

  • 原島 遙香さん

    出席番号26番、
    現在は法学部3年生

  • 小柴 晴輝さん

    出席番号13番、
    現在は工学部2年生

  • 奥田 早紀さん

    出席番号7番、
    現在は保健学部3年生

  • 八巻 悠さん

    出席番号30番、
    現在は政治経済学部3年生

Special Movie

当日の様子はこちら

Theme 01

小学生当時を振り返って

たとえブーイングされてでも
教えたかったこと

下里先生

4組のみんな、久しぶり!みんなとの思い出は星の数ほどあるけど、やっぱり一番印象に残っているのは卒業目前のロープジャンプ大会かな。日野市の大会に出場することになったのはよかったけれど、もめにもめたよね。覚えてる?

小柴さん

もちろんです。他のクラスは運動神経のいい有志の子だけでチームを組んだのに、4組は全員で飛ぼうってなったんですよね。

奥田さん

「勝負にこだわる」派と「参加することに意義がある」派で衝突して、目標もなかなか決まらなくて。

八巻さん

そうそう。運動が苦手な子は失敗ばかりで「しっかり跳べよ!」なんて言われて、本当にまとまりきれるのかなって心配でした。でも最後には「みんなで楽しもう」と意見が一致して、それからは本当に一体感が生まれたと思う。

小柴さん

原島さんたちが作ってくれた「絆」って書かれたミサンガをみんなで巻いたよね。

下里先生

その結果、見事に市で3位入賞だから本当にすごかった。

原島さん

先生は本番前に全員に手書きのメッセージをくれました。「卒業前の最後の思い出にしようね」って書いてあったのを、冬の朝、緊張しながら読んだ記憶があります。あと、賞状がクラスで1枚だったので、クラス全員34人分を手作りして渡してくださいました。

下里先生

他にも、移動教室の部屋割りも大変だったよね。誰と一緒がいい、誰とはイヤだってもめて、今まで仲よくやってきたクラスが崩れていくようで悲しかった。

奥田さん

結局、怒った先生が「全部私が決めます」って。

下里先生

そのことに対して「先生には失望しました」ってブーイングする子もいた。

八巻さん

すみません(笑)。当時はそれほどでもなかったつもりでした。

下里先生

あのときは「自分は避けられている」って感じる子がいるんじゃないかって、みんなに気付いてほしかったんです。自分の行動が正しいかどうか、自分自身で責任をもって判断する力を身に付けてもらいたいと思いました。

原島さん

下里先生の子供1人ひとりに対する熱量はすごくて、今振り返っても、本当に全力投球の先生でした。

 

うんうん。

ロープジャンプ大会で使った絆Tシャツとミサンガ、大会前に先生から全員に宛てた直筆メッセージ

Theme 2

今だから分かる、先生の想い

大人になって振り返ったとき、
やっと気付いたことも

小柴さん

下里先生は板書の字がとてもきれいで、毎朝読むのが楽しみでした。

原島さん

卒業式の朝に書いてあった<みんなが成長する姿を一番近くで応援できて幸せでした。元気に巣立ってください!前へ、前へ!>というメッセージは感慨深かったです。

八巻さん

「これからもずっとみんなの担任です」と言ってくれたのも嬉しかった。中学でもきっと頑張れるって思えました。

奥田さん

手紙もたくさんくれましたね。まだ部屋の中にいっぱい残っています。

下里先生

東京都には何十万人もの子供がいて、私は仕事で担任を持つことになるけれど、子供たちは先生を選ぶことはできないわけです。こういう“縁”のもとでの出会いだから、「この子たちにはどういう大人になってほしいのか」という気持ちは大切にしていました。ここで出会ったからには一生見守りたいと本心から思っています。

小柴さん

僕が覚えているのは、雪の日の下校路でふざけすぎて近隣に迷惑をかけたことです。翌日、下里先生にきつく叱られたけれど、そのとき先生は泣いてたんです。子供心に“感情が暴走してるぞ”って思いました。

八巻さん

先生はもともと涙もろかったしね。

下里先生

今日もずっとうるうるしてるよ(笑)。

小柴さん

でも後になって、先生は先生の期待を僕らが裏切ったことが悲しかったんだって気付きました。それからは周囲の大人たちを悲しませるような生き方はしちゃダメだって思うようになったんです。人生の考え方が変わった出来事でした。

奥田さん

先生って、親以外で初めて信頼できる大人じゃないですか。むしろ親に言えないことでも、先生なら言えちゃうし。だから先生のことは絶対に裏切っちゃいけないし、期待に応えなきゃって思ってました。

原島さん

中学ぐらいまでは仲の良い友だちとだけ付き合っていればいいけれど、大人になれば価値観の違う人ともちゃんと向き合っていかなきゃならないですよね。先ほどの部屋割りの件でも、下里先生にはそんな大切なことを教わったと思います。

下里先生

小学生時代って、相手を傷つけたり傷つけられたりする経験の中で、人を思いやる大切さについて知る時期なんです。人の役に立つ喜びを自分の糧にできるよう、実感してほしいなと思っていました。

Theme 3

社会人になるにあたって

それぞれの人生、それぞれの選択

下里先生

みんなは今大学生で、そろそろ将来の進路も真剣に考える頃だよね。

原島さん

私は法学部で法律の勉強をしていて、特に社会保障や労働関係の分野に興味があります。これから専門の資格を取得し、将来は社会保険労務士として働きたいと考えています。

下里先生

ハルちゃん(原島さん)はクラスの中ではお姉さんタイプの子で、むしろ私の方がいつも助けてもらっていました。自分のやりたいことを見つけて、素晴らしいと思います。

小柴さん

僕は理系なので大学院に進む予定です。将来どんな風に社会貢献できるか、これから見つけていきたいと思います。

下里先生

コッシー(小柴さん)は、みんなが私の周りに集まって盛り上がっているときも、遠くから見ている子でした。当時から自分の場所を大切にして、自分のやりたいことを見つける子だったんですね。

奥田さん

私は看護学科で、今は病棟で実習もしています。将来は看護師として、地域の方々を支えたいと考えています。

下里先生

サキちゃん(奥田さん)もハルちゃんに似てお姉さんタイプで、プリントを率先して配ってくれたり、いつも私をサポートしてくれたりしていました。人を支えたり助けたりするのが得意だったから、看護師のお仕事はぴったりだと思います。

八巻さん

僕は下里先生に応援されてリーダーシップを身に付けることができました。将来は人を応援し、支えられる仕事に就きたいと考えていて、それこそ教師もいいかなって思っています。

下里先生

ユウくん(八巻さん)は最初の頃とてもシャイだったけど、次第にクラスのまとめ役へと“キャラ変”しました。ロープジャンプ大会でもリーダーを務めてくれましたね。

八巻さん

下里先生が担任になってから、リーダーにも挑戦してみようかなと思うようになったんです。

下里先生

生き方や考え方はみんな違うけれど、豊かな色がどんどん増えていくような人生を送ってほしいって思っています。先ほど、人の役に立つ喜びを自分の糧にしてほしいと言いましたが、人と同じように自分のことも大切にしてください。そして自分と深く向き合い、自分の強みが発揮できる仕事、自分で決めたと言い切れる選択をしてほしいですね。

Theme 04

最後に~久しぶりの再会を振り返って

今の自分は教え子たちのおかげ

下里先生

今日、こうしてみんなと会えたことで、教師という仕事の喜びを改めて感じました。それは教えているときだけでなく、自分の手を離れても子供たちがイキイキと輝いている姿に触れられること、その姿を応援できることです。教え子たちが幸せに過ごしていたら、自分の人生もすごく豊かに感じられます。

八巻さん

先生がずっと応援してくれているって、すごく大きな安心感です。こうして再会できることは、嬉しいです。

小柴さん

大学のサークルで小学生向けに金融教育をすることになったとき、下里先生に相談したら「すぐやろうよ」って言って応援してくれました。休日なのに準備を手伝ってくれ、昔と変わらず、今も熱い先生だと感謝しています。

奥田さん

病院実習ではつらいこともあります。でも先生が応援してくれると思うと頑張れます。先生が言ってくれた「サキちゃんならできるよ」という言葉は私の自信になっているし、落ち込んだときも“きっと大丈夫”って思えるんです。

原島さん

今は就活や勉強のことで頭がいっぱいですけど、今日、先生のお話を聞いて、改めて周囲の人に影響を与えられる存在にならなきゃって思いました。社会人になっても頑張ります。ありがとうございました。

下里先生

私こそ、今の自分があるのは教え子たちのおかげだと感じて、感謝の気持ちでいっぱいです。教え子の未来について一緒にワクワクできるのは教員の一番のやりがいだし、みんなが彩り豊かな人生を過ごしてくれるよう、願っています。

対談の最後には、下里先生から皆にサプライズのメッセージが!

興味関心かあらコンテンツを探す