佐藤 寛子
町田市立町田第一小学校
指導教諭(平成16年度採用)
「氷が溶けたら春が来るよ」。“水になる”との答えを求めていた私にとってこの言葉は、まさに驚きの一言でした。教育実習先の小学校でのことです。子供ならではの感性を大切に伸ばしていく、そんな先生になることを決心した出来事でした。小学校の教員の魅力は、なんといっても6年間かけて子供に寄り添えることです。可愛らしさあふれる1年生から、下級生を思いやる優しさとたくましさを身に付けた6年生まで、子供の成長に携われる素晴らしい仕事です。さらにその後の人生の土台づくりにも関われる、非常にやりがいのある仕事でもあります。
東北地方出身の私が東京都で教員になる道を選んだのは、学べる施設や環境が充実し、人との出会いにも恵まれているからです。東京ならではのこうした魅力は子供たちにもぜひ伝えたいと考えており、いずれ大人になってから「実は贅沢な環境で学んでいたんだな」と気付いてもらえるような授業を心掛けています。
私が初めて送り出した卒業生から、「先生と同じ教員になりました」というメールを、私が授業で話した言葉とともにいただいたことはとても嬉しい思い出です。私は道徳の教育に力を入れているのですが、正解がなく、長期的な視点も必要な道徳は、教えることが難しい教科の一つです。そんな中でも子供たちにいつか役に立ててもらいたいと思って取り組んできたので、授業で私が話したことや、一緒になって考えたことを、その卒業生が「大人になった今も覚えています」と言ってくれたときにはとても感動しました。
1年生から6年生までの6年間の子供の成長に寄り添えることがこの仕事の魅力とお話ししましたが、このように卒業後の姿に触れられることも、教員ならではのものではないでしょうか。同じようなエピソードをおもちの先生は少なくありません。苦労した分、その何倍もの喜びが返ってくることが、教員の仕事の醍醐味です。
私は指導教諭としての業務にも力を入れています。指導教諭は各教科の授業のスペシャリストとして、その指導の充実や改善を近隣校にも働きかける役割を担います。私も人権等のテーマについて講演を行ったり、他校の授業づくりについての相談に応じたりといった取組をしています。
これらの機会を通じた人との出会いは私の教員人生における素晴らしい刺激です。模範授業を行う際は他校の先生方も見学にお見えになるのですが、授業を通じて教員の仕事の素晴らしさに改めて気付いてくれたら嬉しいですし、持ち帰って自校の先生たちに気付きを広めてくれるならこれ以上の喜びはありません。
また、私の小学校にはある約束事があります。“さようならを言うのは卒業式だけにしよう”です。ですから下校の際も「さようなら」を言いません。子供たちとは「また明日」と挨拶を交わしています。子供たち一人ひとりが“明日はどんな一日だろう”と思い、私も“明日はこんな授業をしよう”と考えて、その思いのもとで次の日にまた出会える。そんな毎日が私は嬉しいですし、その積み重ねの上に子供たちの未来が築かれていくと信じています。
スクール・サポート・スタッフに加え、ボランティアコーディネーターという地域との協働活動の手助けをしてくれる方々等が私たちの業務を手伝ってくれています。おかげで私たちは授業づくりや児童への指導といった教員本来の業務に集中しやすくなりました。その結果、仕事の進み具合は非常にスムーズなものになり、残業が減って帰宅時間も早くなったことは間違いありません。私自身も家族と過ごす時間を含め、余裕あるプライベートを楽しんでいます。
休日は愛犬との散歩やカフェでの読書、図書館や美術館巡り、家族との旅行などで過ごしています。特に読書は大好きで、お休みとなると読みたい本を3冊ほど手に取ってお気に入りのカフェに向かい、一日中本の世界に没頭します。子供の頃からジャンルにこだわらずに何でも読むタイプです。読書は、気持ちがリフレッシュされると同時に、頭のリセットにもつながる、私にとっての大切な時間です。