竜瀬 紗季
あきる野市立多西小学校
養護教諭(令和元年度採用)
私が「養護教諭の仕事っていいな」との思いを強くしたのは、学生時代の教育実習でした。学校で保健室のお世話になった経験がほとんどなかった私は、大勢の子供たちが保健室を必要としていることに衝撃を受けたのです。けがをしたり、体調が優れなかったり、気持ちが沈んでしまったり、様々な理由で保健室にやってきた子供たちは養護教諭の顔を見て安心した表情を浮かべていました。その様子を見て、私も養護教諭として子供たちに寄り添っていこうと決心しました。
私は地方出身で、知り合いが全くいない東京都で教員生活をスタートさせることには不安がありました。そんな私を支えてくれたのは、初任者研修で出会えたたくさんの仲間たちです。東京都は学校数が多い分、同期の養護教諭の数も多く、広い横のつながりがあります。おかげで孤独感や寂しさを感じることなく新しい生活を始められました。この仲間たちとは今も連絡を取り合っています。
私が大切にしているのは「誰もが入りやすい保健室」であることです。児童がいつでも安心して立ち寄れるよう保健室の扉は開けておき、常に笑顔で対応することを心掛けています。
思い出深いのは、ある保健室登校の女子児童です。1対1の会話や手紙交換のコミュニケーションを重ねつつ、「朝の会だけ参加する」、「不安の少ない授業から参加する」、「昼休みに友達と過ごす」などスモールステップの目標を設定し、一つひとつ一緒にクリアしていきました。また、本人の気持ちを担任や保護者と共有して、彼女の不安要素を取り除いていったことで、1年後には教室に戻れるようになりました。そんな彼女が卒業後に私にくれた手紙には「学校にも家にも居場所がなかった私に、先生がいつもおはようと挨拶してくれるだけで、本当に嬉しかったです」と書いてありました。この手紙は今も私の宝物です。
保健室を訪れる児童は不安や悩みを抱えている子が多く、だからこそ1対1の関係で接することのできる保健室はそれを吸収してあげられる場所になれると考えています。担任の先生は一人で多くの子供たちと接するため、一人の子供に深く寄り添うには限界があります。私は授業中の教室を巡回して気になる子供たちの様子をさりげなく観察したり、保健室での様子を情報共有したりしています。
気をつけているのは、私自身が負の感情に共鳴しすぎてしまわないようにすることです。最初の頃は、体調が優れなかったり気分が落ち込んでしまう児童への寄り添い方が分からず、児童に影響を受けて自分も落ち込んでしまうことがありました。経験を積んだ今はリフレッシュの時間を通じて自分をコントロールできるようになりました。子供たちといつでもしっかり向き合える状態でいるためにも、メリハリをつけて働くことはとても大切だと感じています。
学校が変われば、保健室にやってくる子供たちが抱える問題も変わるでしょう。今後は様々な学校で経験を重ねることで、自分のポテンシャルを高めていきたいと考えています。
校務のICT化によって健康診断の結果はデータ入力となり、記入の手間やミスが大幅に減りました。また情報も紙面からデータで共有できるようになって印刷の手間や資源の無駄が改善されたほか、行事や会議の見直しが進んで行事準備や会議時間も短縮されました。私が特に助かっていると感じるのが、スクール・サポート・スタッフの方々の存在です。大量のプリント印刷などの仕事を引き受けてくださるので、子供たちと向き合う時間をより多く作ることができています。
趣味は旅行です。国内旅行が好きで、全ての都道府県へ旅行することが目標です。旅行先では、観光地を巡ったり名産の食べ物を味わったりして過ごします。旅行計画を立てることも好きで、次はどこへ行こうかと考えている時間そのものが、私にとってのリフレッシュにつながっています。今後はキャンプにも挑戦したいと思っています。