島崎 友理子
Yuriko Shimazaki
世田谷区立上祖師谷中学校
3年生担当・社会科
(管理職候補者)
MY CAREER
キャリアを重ねるほど、
新しい世界が広がっていく
一人の不安を越えて。「教科書を教える」からの脱皮
この前、教育実習を終えたんだけど本当に楽しかった。高校生のみんなと一緒に考えを広げたりして、「共に知る喜び」を肌で感じられた気がする。早く教壇に立ちたいなってワクワクしているんだけど、不安も大きいんだ。実習みたいにうまくいくことばかりじゃないだろうし...。
そのワクワクする気持ち、ずっと大切にしてね。でも、あえて伝えておくと最初の赴任先は大変だったよ。葛飾区にある中学校になるんだけど、そこは1学年に2~3クラスの小さな学校で、2年目からは社会科の担当が私一人だけになったんだよ。
まだ新人なのに、それは心細いね。
そう思うよね。実際、当時の私はまさに手探り状態で「失敗しちゃいけない」と必死だったし、学習指導要領の内容を漏らさず伝えようとするあまり、気づけば「教科書を教える」だけの授業になってしまっていた。でも、それを改善するための体系立てた研修が3年目まであったし、周りの先生方に相談に乗ってもらえていたから、何とかやっていけていたかな。
そういった環境があるなら安心だね。4年目以降はどうしていたの?
うん。そこから全員で受ける研修は少なくなったんだけど、もっと成長したいと考えて「東京教師道場」への参加を希望したの。
そこではどんなことが学べたの?
都内の若手の先生が集まって、2年間、毎月1回程度、一緒に研究授業をして徹底的に授業作りを学び直すんだよ。最初は自分の未熟さに打ちのめされるけど、実習のときに感じた「知る楽しさ」を自分の授業で形にできるようになるから、毎回楽しみに参加していたな。
多様な個性に向き合う。チームで支える教育相談
生徒との関わり方はどう?きちんと向き合えるか心配で...。
そこが次の大きな壁だったね。2校目の町田市の中学校は学年5クラスの大規模校だったんだけど、多様な生徒や難しい課題を抱える家庭に直面したの。向き合い方が分からず右往左往してたな。
どうやって乗り越えたの?
その頃は教員になって8年目だったんだけど、主任教諭の試験を受けたんだよ。実は、初任のときからずっと憧れていた英語の先輩がいてね。授業もクラス運営も素晴らしく、常に新しいことに挑戦して「主任教諭」として活躍していたんだ。その姿がすごく魅力的で、「あの先輩のように、もっと力を付けて自信をもって子供と向き合いたい」って強く思うようになったんだよ。
昇進が目的じゃなく、力を付けるための挑戦だったんだね。それで、生徒への向き合い方は変わった?
昇進した後、「教育相談主任」を任されてから視点がガラッと変わったな。自分のクラスだけじゃなく、学校全体を見るようになったの。各学年の先生から「今こんなことが起きています」と相談を受けて、それを管理職に共有したり、外部の専門家に相談したりする「つなぎ役」になったんだ。そのおかげで、視野が広がったんだよ。
学校全体を見るのは大変そうだけど...。
確かに責任は大きいけど、「点」じゃなく「チーム」で生徒を支える経験をしたことで、「どの子にもその子なりの成長がある」ってどっしり構えられるようになったよ。
視野が広がることで見えてきた、学校全体を支えるという役割
授業もできて、生徒一人ひとりに寄り添う教育相談の経験も積んで、次のキャリアはどう考えたの?
次のテーマは「リーダーシップ」だったんだ。それが「主幹教諭」を目指すきっかけになった。教員12年目に世田谷区の中学校へ異動になったんだけど、そこにはリーダーシップのある優秀な先生がたくさんいて、一人の組織人として「このままでいいのかな」と、自分のキャリアに迷いが出ていた時期だったの。
迷い…。具体的にはどうしたの?
当時の副校長先生に相談したんだ。その方は若くして主幹から昇進した、すごく前向きで魅力的な方でね。私が悩んでいると、「将来のリーダーを育てる育成講座があるよ」と教えてくれた。そこで、現状を変えるために「新しいことを知りたい、学びたい」ってスイッチが入ったんだよ。
その講座で、何か答えは見つかった?
うん。そこには前を向いて挑戦している人たちがたくさんいてね。その人たちのように学校の課題に対して「こうすればよくなる」と論理的に語ることができる、そんな「説得力のある人間」になりたいって思えるようになったんだよ。そして、「一人で仕事をするには限界があるけれど、みんなで組織として動けば、もっと大きな課題を解決できる」ということも知れて、もやもやがスッキリ整理されたんだ。
それで、主幹教諭への道を選んだんだね。
そう。主幹って「大変そう」というイメージがあったけれど、教員15年目に上祖師谷中学校に来てからは、学年主任や経営主任を任され、学年や学校全体をまとめる経験を通して、視野がぐっと広がったんだ。そのおかげで、新しいやりがいを感じられるようになったし、立場が自分を成長させてくれる面白さを、まさに実感しているよ。今は主幹教諭として、教職員はもちろん、地域の方々とも力を合わせながら、「チーム上祖師谷」を合い言葉に、一丸となって教育活動を進められる環境づくりに取り組んでいるんだ。
生徒と共に成長する。教員という仕事の本当の喜び
教員のキャリアって、もっと「出世」や「責任」といった重いものだと思っていたけど、話を聞いていると捉え方が変わってきた気がする。
そう感じてもらえたなら嬉しいな。私にとってキャリアは、決して難しいものではなかったんだよ。いつも目の前の仕事に一生懸命になればなるほど、必ず何かの壁にぶつかるよね。その壁をどう乗り越えるか考えたとき、私にとってはそれが「研修」だったり「新しい職層へのチャレンジ」だったりしただけなの。
壁を乗り越えるための手段が、結果的にキャリアアップにつながっていたってこと?
そのとおり。チャレンジすることで目の前の課題が解決できるし、自信も付く。何より「自分の知らない新しい世界」を知ることができるから、すごくワクワクするし、仕事がどんどん楽しくなるんだよ。だから、キャリアを積むことは、自分を助け、可能性を広げてくれるものだと思ってほしいな。
「自分が成長し続けることで、生徒に還元できるものが増える」って、すごく素敵な循環だね。
本当にそう。以前、初任の学校で教えていたときの生徒が大学生になって、「先生の授業ノート、今でも宝物です」と会いに来てくれたことがあったの。自分の拙い想いが、時を越えて誰かの人生につながっているんだって知ったときは、この仕事の本当の喜びを感じたよ。
最後に、これから教壇に立つ私にアドバイスをくれる?
完璧になろうとしなくて大丈夫。教員の仕事に唯一の正解なんてないから。まずは、生徒に対して「まっすぐ向き合う」ことを大切にしてね。そして、実習で感じたワクワクを忘れずに、生徒と一緒に悩み、一緒に成長していけばいいんだよ。自分の成長が誰かの笑顔に直結する、こんなに充実した仕事はほかにないはずだから、迷わずに自信をもって一歩を踏み出してほしいな。