障害を持つ子供の力になりたい。
想いを叶えるために
臨時的任用教員へ
臨時的任用教員STORY 04特別支援学校
- 前田 千歳
- 東京都立府中けやきの森学園(取材校)
令和元年度・臨時的任用教員任用
臨時的任用教員になる以前について
大学は人文学部に所属して政治や社会について広く学び、在学中に教員免許を取得したのですが、教員の道は選択しませんでした。自分の中に「まだ社会のことをよく知らない自分が、子供たちに社会で生きていく力を教えられるのか」というひっかかりがあったからです。そして、大学卒業後はパンの製造・販売を行う企業に就職しました。そこで8年ほど営業職として働いたのですが、結婚をしてライフスタイルが変化したことをきっかけに、図書館管理業務の受託を行う企業へ転職しました。そうした前職の経験で学んだ社会人としてのマナーやコミュニケーション力は、今の仕事にもしっかりと活かされていると感じます。特に2社目では図書館に勤務して児童書を担当しており、そこで得られた本の知識は今の仕事にとても役に立っています。
臨時的任用教員に応募したきっかけは?
1社目で働いていた頃、障害のある方を雇用しているベーカリーにパン生地を卸していたのですが、振り返ってみると、その「障害のある方に活躍の場をつくる」という取組に関心を持ったことがはじめのきっかけだと思います。さらに2社目の図書館で勤務した際、障害を持つ子供たちが遠慮がちに本を読んでいる姿に違和感を覚え、「もっと力になれることがあるのでは」と強く思うようになりました。さらに、社会人経験を積んだことで、「子供たちに今までの経験を踏まえて、社会で生きていく力を伝えていくことができるかもしれない」という自信もついていましたので、思いきって一歩を踏み出してみることにしました。そこで、大学の特別支援教育専攻科で学びなおして特別支援学校教諭の免許を取得し、東京都の臨時的任用教員として挑戦することになりました。

実際に臨時的任用教員として働いて感じるやりがいは?
私が担当しているのは、肢体不自由のある小学部5年生です。一人ひとりの子供に向き合う中で、できないことができるようになった姿を見ることが大きなやりがいになっています。もちろん、子供たちがそうなるためには根気強さが必要であり、「なぜこの行動をするのだろう?」と悩むことも多いです。それぞれに個性がありますから、一様ではない難しさがあります。しかし何度も見ていると、その子の想いや考えが見えてくる瞬間があります。その時、「ああ、この子のことを理解できた!」と嬉しくなります。
授業でも、一人ひとりに合った教材や支援方法を工夫するのは大変ですが、その工夫によって子供が新たな力を発揮してくれた時には、本当にやっていてよかったと感じます。
正規職員との違いや働く環境について感じること
正規教員と臨時的任用教員で、業務内容に大きな違いはありません。子供や保護者からすれば、どちらも「先生」ですから、常に責任と緊張感を持って仕事に臨んでいます。同僚の授業を見たり、相談したりする中でたくさんのことを勉強できるため、日々の学びも非常に多く、希望すれば受けられる研修もあります。さらに、この学校の先生方は、忙しい中でも手を止めて親身に話を聞いてくれる方ばかりですし、お互いに支え合いながら、よい授業づくりや子供への支援ができる環境にとても助けられています。

ライフ・ワーク・バランスについて
出産した後、子供が幼稚園に通っている時に教員を目指すことを決意しました。当初は正規教員になることも考えていましたが、家族との時間や将来のライフイベントを考慮すると、1年単位で働き続けるかどうかを決められる臨時的任用教員という選択が自分には合っていると感じました。看護休暇や有給休暇といった制度も正規教員と同じように利用でき、とても心強いです。日々の業務の中でも「今日は早く帰る日」とあらかじめ決めるなど、メリハリをつけて働けるよう工夫できますし、家庭と仕事の両立がしやすい環境だと思います。
臨時的任用教員を目指す方へのメッセージ
私は30代半ばで教員の道に飛び込みました。年齢やこれまでの経歴で迷っている方もいるかもしれませんが、「今までの経験がきっと活かせる」と信じて、一歩踏み出してみてほしいです。私自身、うまくいかずに落ち込むこともありました。でも、子供たちから元気をもらえたり、周りの先生方が「がんばってるね」と声をかけてくださったり、そういった積み重ねが私を支えてくれていると思います。子供たちの未来のために、そして自分自身の成長のために。臨時的任用教員という選択は、必ず意味のあるものになると思います。

COLUMN
東京都の臨時的任用教員の魅力
私は地方の出身なのですが、東京都で働くようになってから文化的な環境の違いに驚くことばかりでした。東京都は本物に触れる機会がとても多い場所です。国会見学は地方ではまずできないですし、スポーツ施設やさまざまな文化機関とのつながりなど、子供たちにとっても貴重な体験ができます。また、特別支援学校でも、東京都ならではのICT機器や支援機器が充実していて、それらを活用した授業が日常的に行われています。しかも、その新しい機器の使い方を丁寧に教えてくれる先生方がたくさんいて、日々学び続けられる環境が嬉しいですね。とても刺激的で、魅力にあふれた場所だと感じています。