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教員のリアルを知る

臨時的任用教員STORY 02中学校

茅野 琴音
品川区立荏原第五中学校
令和4年度任用

臨時的任用教員になる以前について

 子どもの頃から教員の仕事に憧れていたにもかかわらず、大学卒業後に民間企業に就職したのは、一度は教員以外の世界を見てみたいとの思いからでした。選んだ仕事はエステティシャンです。技術を磨いてお客さまに喜んでいただくことは楽しく、大きなやりがいがありました。しかし次第に自分が本当にやりたかった仕事は別にあるのではないかと思うようになり、改めて教員を目指すことを決心。一年ほどで退職しました。とはいえ、いきなり教育の仕事に携わる自信がなかったことから、放課後子ども教室等の事業を展開する企業に転職し、子どもと接する経験を積むことにしました。教員になるためのよい準備期間になったと思います。

臨時的任用教員に応募したきっかけは?

 放課後児童支援員としての仕事を続けるうちに心の中で大きくなってきたのが、もっとしっかり子どもと向き合いたいとの気持ちでした。私は音楽大学で声楽を専攻しており、勤務中に合唱や楽器の音が聞こえてくると、教員として専門的に音楽を教えたいとの思いが強くなってきたのです。その気持ちを抑えきれず、思い切って退職し、教員になることを決めました。ただ、年度途中での転職であったため採用試験のタイミングが合わず、すぐに正規教員にはなることはできませんでした。そこで臨時的任用教員に応募することにし、現在の中学校で働くことになりました。いずれ正規教員を目指すつもりですので、それまでの生活と勉強のために選んだ道です。

実際に臨時的任用教員として働いて感じるやりがいは?

 授業で教えた歌や音楽を生徒が廊下で口ずさんでいるのを耳にすると、音楽教員としての大きな喜びを感じます。友達同士でハーモニーを楽しんでいる姿も目にします。
 中には思春期ならではの照れくささからか、なかなか歌ってくれない生徒もいるのですが、一生懸命に声をかけて心をほぐしてあげると、次第に声を出してくれるようになります。そんな姿を目にするのも、とても嬉しいことです。生徒たちが合唱コンクールを前に本気で練習し、クラス全体の歌声が素晴らしくきれいになっていくと、同時にクラスの人間関係もより良いものになっていくと実感できます。
 私が大切にしているのは、常に生徒たちと同じ目線で気持ちを交わすことです。時には授業中、教え方に自信が持てなくて生徒に念押しすると「今の説明で分かったけれど、こんな言い方ならもっとよく分かると思うよ」と教えてもらうことも。生徒に育ててもらっていることを自覚し、これも教員ならではの喜びだと感じます。

正規職員との違いや働く環境について感じること

 任用が決まったときは喜びと同時に、自分に教員の仕事が勤まるだろうかとの不安もありました。その思いを察してくれたのか、校長先生が私に電話をくれて励ましの言葉をかけてくださいました。おかげでずいぶんと緊張がほぐれたことを覚えています。
 このように周囲の先生方が常に心を配ってくださることを嬉しく感じています。生徒や保護者への対応に迷っているとベテランの先生方がアドバイスを送ってくれますし、逆に行事の内容などについて私の意見を求められることもあります。臨時的任用教員、正規教員の間に壁はなく、私も同じチームの一員として受け入れられていることを実感します。こうしたフランクな関係は、私にとってとても心地良いものです。

ライフ・ワーク・バランスについて

 教員の業務を支援してくださるスクール・サポート・スタッフの皆さんには大変お世話になっています。音楽の授業には楽譜が必須で、合唱コンクールともなると全校生徒分と先生方の分、合わせて600冊もの楽譜を印刷・製本しなくてはなりません。とても1人ではこなしきれないほどの作業量です。しかしスクール・サポート・スタッフの方がその作業を引き受けて下されるので私は過分な残業をする必要もなく、教員本来の仕事に集中することができます。
 スクール・サポート・スタッフにはベテランの方もいれば新人の方もいらっしゃいます。地域の方が中心ですので、地元の事情について詳しく教えてくださることもありがたいです。

臨時的任用教員を目指す方へのメッセージ

 臨時的任用教員になってみて感じるのが、実際に生徒との触れ合いを通じて、徐々にですが教員としての自分に自信が持てるようになったことです。もし、教員を目指しているけれど自信がないとお考えの方がいらっしゃるなら、ぜひ臨時的任用教員から始めてみるといいと思います。それで自信がついたなら改めて正規教員を目指してもいいでしょうし、ずっと臨時的任用教員で働き続けてもいいでしょう。
 私は民間企業に2年ほど勤めた後に臨時的任用教員になりました。もし迷われている方がいるなら、できるだけ早く決断されることをお勧めします。民間から教員へのキャリアチェンジを図る上で、臨時的任用教員はとてもよい働き方だと思います。

COLUMN
東京都の臨時的任用教員の魅力

 音楽教員として特に魅力に感じるのは、東京ならではの充実した文化環境です。日本でトップレベルの音楽や演劇に気軽に触れられる環境は素晴らしく、生徒にも素晴らしい舞台の鑑賞を勧めることができます。東京に暮らしている人にとっては当たり前のことかもしれませんが、地方出身の私からすれば、これはとても恵まれた環境だと思います。まさに日本の文化・経済の中心である東京ならではの魅力と言えるでしょう。