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教員のリアルを知る

時間講師STORY 02中学校

田中 和代
八王子市立第二中学校(取材校)
他3校勤務
平成22年度任用

時間講師になる以前について

 高校生の頃は教師の仕事に憧れており、大学は教育学部に進みました。しかし当時の教員は非常に狭き門で、教員採用試験に自分が受かるとはとても思えず、早々に教員の道は諦めてしまいました。そして大学卒業後はすぐに結婚し、出産を経て、2人の子育てに追われる日々となりました。
 上の子が小学校に上がり、下の子が幼稚園の年長クラスになった頃、子育てにも少し余裕が出てきたため、アルバイトで働き始めました。勤め先は、友人に紹介してもらった飲食業です。もちろん当時は子育てが最優先でしたので、なるべく時間の融通が利くところをと思って探した仕事でした。自分のペースを大切に、落ち着いて働くことができたと思います。

時間講師に応募したきっかけは?

 飲食業で働きながら、上の子のPTAで役員を務めるうち、子供と関わる仕事がしたいとの思いがわいてきました。そこで八王子市教育委員会で募集していたアシスタントティーチャーに応募してみましたが、残念ながら不合格でした。
 ところが私の書類を見た教育委員会から「家庭科の時間講師をお願いしたい」との連絡があったのです。まったく経験がないので無理ですと一度はお断りしたものの、改めて電話があり、「経験がなくてもフォローしていくので学校側がお会いしたい」とのこと。ともかく話だけでもと中学校を訪ねたところ、副校長先生に「是非お願いしたい」と言われ、断り切れずに引き受けることになりました。時間講師としての仕事は、こうして始まりました。

実際に時間講師として働いて感じるやりがいは?

 断り切れずに時間講師を始めて以来、15年がたちました。その間、「疲れた」と思うことはあっても「辞めたい」と思ったことは一度もありません。今では学校の中で一番のベテラン教員です。
 ここまで続いた理由は、とにかく仕事が楽しいの一言に尽きます。ちょっとやんちゃで、私のことを「主婦」と呼んでからかっていた男の子が、卒業時に「先生、ありがとなあ」と言ってくれたことがありました。初めて3年間通して教えたクラスの子だったので、喜びもひとしおでした。担任ではなくてもそうした気持ちのつながりができるのは、本当に嬉しいものです。むしろ時間講師で、週に一度しか顔を合わせないから、ちょうどいい距離間を保てたのかもしれません。
 約束を守るとか、嘘をつかないといった、人としての正しいあり方については特に厳しく生徒を指導しています。この点で、母親として2人の子供を育ててきた経験が活きていると感じます。

正規職員との違いや働く環境について感じること

 現在は週5日、八王子市内の4つの中学校で家庭科を合計24時間教えています。いずれの学校も自宅から近いため、雨や雪の日でも通勤が苦になることはありません。以前は午前中だけの勤務でしたので、子供が学校から帰ってくるときは家で迎えてあげられました。
 このように自分のライフスタイルに合わせて勤務日や時間、場所を選べることは時間講師の最大の魅力だと思います。他の時間講師の先生を見ても、親の介護があるので特定の曜日は通院のために授業を入れなかったり、ご主人の扶養家族の範囲内に収まるよう調整していたりするようです。
 また、仕事は授業だけで、行事等には携わらずに済む点も、メリットだと思います。

ライフ・ワーク・バランスについて

 有給休暇はしっかり取得できます。私も子供が小さい頃は、合唱コンクールを見学するために平日に休暇を取得することがありました。今は子供も成人したのでそうした休み方はしなくなりましたが、それでも夏にはしっかり約1ヵ月間、休んでいます。
 夏休みにも勤務時間を割り振られるのですが、その時間を1学期、2学期の授業に割り振ることができるため、結果として夏休みに勤務する必要がなくなるわけです。働き方が柔軟であることに加え、休みの取り方も柔軟であることは、大きな魅力です。心にゆとりを持ちながら過ごすことができます。

時間講師を目指す方へのメッセージ

 私が教育委員会から時間講師のお誘いを受け、一度断ったのは、自分に自信がないためでした。一度も教壇に立ったことがなかったので、それも当然でした。しかし思い切って挑戦してみたことで、結果として15年も続けることができました。最初の頃は必死でしたが、無我夢中で頑張っているうちに今まで続けてこられたとの思いが率直な感想です。
 ですから、教員免許はあるものの教員として働いた経験がない方も、ぜひ一度トライしてみることをお勧めします。まずは週に1コマでいいので、一歩を踏み出してみてはいかがでしょう。不安があるのは当然のことです。でも、1年が過ぎたら、きっと次の1年も頑張ろうと思えるはずです。思い切って始めてみませんか。

COLUMN
東京都の時間講師の魅力

 時間給で見ると、民間の仕事に比べて時間講師の仕事は非常に恵まれていると感じます。期末手当(ボーナス)も、時間講師に対してもしっかりと支給されますし、令和6年度から勤勉手当も支給され、その額も一気に増えました。経済的な面でとても恵まれているのが、東京都の時間講師だと感じています。成人した娘たちも「お母さんの働き方っていいね」と、うらやましがっています。