
時間講師STORY 01小学校
- 大下 志津江
- 江戸川区立臨海小学校
平成14年度任用
時間講師になる以前について
私が大学で教育学部に進んだのは、生涯働ける専門性を身に付けたいとの思いからでした。卒業と同時に出身地である愛媛県で小学校教員となり、4年間勤務した後、結婚し、夫の転勤に伴って東京に転居しました。
生まれてからずっと愛媛県で暮らしてきたので、東京ではやはり気後れしてしまいます。方言も気になりましたし、私に“東京の子”を教えるのは荷が重いと感じ、教員として働くことはいったん諦め、民間企業で契約社員として働きました。そして第一子出産後は、飲食店のパート勤務に変わりました。
民間企業で働いたことは、基本的なビジネスマナーや所作、お客様対応、コミュニケーションにおける気の遣い方などを身につけることにつながったと感じています。
時間講師に応募したきっかけは?
2人目の子供が生まれ、子育てにも慣れてきた頃、図書館での読み聞かせのボランティアを始めました。子供たちと触れ合う時間はとても楽しく、教員時代の日々を思い出しながら、取り組みました。また、自分自身が保護者として学校と関わるようになったことも、そうした思いを強くすることにつながりました。
ある時、子供を通わせていた幼児教室の先生が、近所の小学校から出てくる姿を目撃し、声をおかけしたところ、時間講師として働いていらっしゃるとのことでした。それまで私は時間講師の存在を知らなかったので、そのお話は大変興味深く、自分でもやってみたいと決心するに至ったのです。特に自分の生活に合わせて働き方を調整できるところには強く惹かれました。

実際に時間講師として働いて感じるやりがいは?
一番の喜びは、やはり子供が成長する姿を目の当たりにできることです。昨日できなかったことが、今日はできるようになり、明日はもっと上達する。それが子供であり、1年過ぎたらまったく違う存在へと大きく成長しているものです。その驚くべき変化を間近で見られるのは、大きな喜びです。
例えば書写の授業で、「はらい」ができなかった子が、私のアドバイスでできるようになると「できた!」と大きな声を上げ、その瞬間、表情までが自信に満ちあふれたものへと変わります。そして、授業が終わるのに「もっと書きたい」と言い出す子もいて、私も教えることの喜びを実感します。
教え方を自分なりに工夫できる点も、面白みです。算数で私が担当する中位のクラスには、授業が理解できる子とできていない子が混在しています。そこで全員が等しく理解できるようなプリントを用意するなどの工夫をします。状況に合わせて様々なアプローチを試みることのできる、非常にクリエイティブな仕事だと感じます。
正規職員との違いや働く環境について感じること
授業に関しては、決められた45分の枠内でしっかりと終えることを自分に課しています。担任を持たない時間講師ですので、他教科の授業を調整して延長したり、早く切り上げたりといったことができないからです。もし時間配分がうまくいかずに休み時間に食い込んでしまうと、次の授業の先生に迷惑をかけてしまうので、気をつけなくてはなりません。
校務分掌については、正規教員と違って時間講師の場合はありません。修学旅行等のイベントにも携わりませんし、保護者対応は担任の先生が行いますので、時間講師が関わることはありません。私から何か保護者に伝えることがあっても、担任の先生を経由することになります。

ライフ・ワーク・バランスについて
これまで10校ほどで働いてきましたが、全て居住地である江戸川区内の小学校です。しかも自宅から自転車で通える距離の学校を選んできました。最も遠方の小学校でも、バスを2本乗り継いで通える距離でした。私は自分の家庭や子育てを何よりも優先したいとの考えですので、その負担にならないような働き方をするには、時間講師は最適だと感じています。
子供が幼い頃はもちろんのこと、高校生になっても弁当の用意や大量の部活着の洗濯などで、母親としては休まる時間がありません。フルタイムで仕事しながらそれらをこなすことは私には大きな負担ですので、自分で働く場所、時間を選べる時間講師でよかったと感じています。
時間講師を目指す方へのメッセージ
ご両親が子育てに協力的な場合や、介護などの必要がない場合は、正規教員として働くのも素晴らしいと思います。ボーナス等の待遇面でも有利ですし。けれど私のように地方から出てきて子育てに親の助けを期待できないような方は、ぜひ時間講師として働くことを考えてみてはどうでしょうか。
もちろん“今から教壇に立つなんて”と臆する方もいらっしゃるでしょう。そういう場合は、教育実習に行った時のことを思い出してみてください。「先生っていいな」と感じた記憶がよみがえり、一歩を踏み出すきっかけになると思います。今の教育現場はデジタル教材などが充実しており、教える上でのサポートも十分整っているので、不安はいりません。

COLUMN
東京都の時間講師の魅力
地方と比べて圧倒的に学校の数が多いのが東京です。そのため選択肢が豊富で、自分の都合に合わせて勤務先を選ぶことができます。また、ダブルワークができる点も魅力で、平日は音楽教員として働き、休日は結婚式場でピアノ演奏をしている方、午前は図工の先生として働き、午後は自分の絵画教室で教えている方もいらっしゃいます。生活の安定のための手段が豊富なのも、東京で働くメリットです。